映画『SNOWDEN(スノーデン)』の前に見ておきたい、もう一つの彼の映画『シチズン・フォー スノーデンの暴露』
エドワード・スノーデンという人物
エドワード・スノーデンは、
軍や会社を転々としつ、アメリカ国家安全保障局(NSA)・中央情報局 (CIA) に技術者として携わっていました。
彼は、NSA局員として情報収集活動に関わっている時に
アメリカ政府の個人監視などの自由侵害行為に直面、強く反感を覚えます。
そして、2013年に
アメリカ国家安全保障局 (NSA) による個人情報収集の手口と、その実態を告発、
メディアの取材に答える形で全世界に公開しました。
彼の映画「スノーデン」が1/27日本公開
ルーク・ハーディングの『スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実(英語版)』、
アナトリー・クチェレナの『Time of the Octopus』
を原作に、
エドワード・スノーデン氏が起こした一連の事件から亡命までを詳細に描いた映画『スノーデン』が、
日本では、2017年1月27日に公開されます。
この映画を見る前に
実はもう一つ、
『スノーデン』よりも前に、彼について描いた映画があるんです。
『スノーデン』という映画が気になっている人、
もしくは彼について興味を持っている方は、
ぜひこちらの映画から先に見てほしいと思います。
『シチズン・フォー スノーデンの暴露』
それが、『シチズン・フォー スノーデンの暴露』という映画です。
この映画はスノーデン氏の事件を元に再現した「スノーデン」とは異なり、
スノーデン氏との接触から取材、告発と亡命までの全てを、
本人に密着して撮ったドキュメンタリー映画になっています。
映画監督 ローラ・ポイトラスが密着
この映画は、映画監督であるローラ・ポイトラスさんがスノーデン氏に密着して撮影したものです。
なぜローラさんは、スノーデン氏が告発する前から亡命するまでの全てをカメラに収めることができたのでしょうか?
実は、ローラさんからスノーデン氏に撮影目的で接触したわけではなく、
スノーデン氏の方から、情報を公開する協力者としてローラさんに接触したのです。
過去にアメリカ占領下のイラクを描いたドキュメンタリー映画の「マイカントリー・マイカントリー」を撮ったことで、アメリカ政府のウォッチリストに入れられ、
さらには、スノーデン氏よりも前にNSAの内部告発をした人物へのインタビュー短編映画も撮っていたローラさんだからこそ、スノーデン氏に接触相手として選ばれたのでしょう。
映画の冒頭でも、この経緯が描かれるのですが、事前に知っていたほうが話を理解しやすいと思います。
監視の実態と恐怖
ドキュメンタリー映画ですので、スノーデン氏の取材から、NSAの告発に至る経緯が淡々と描かれています。
しかし、スノーデン氏の口から語られる内容は
紛れもなく「本物」のアメリカ政府による監視の実態です。
日本では事件の後、ほどなくして大して話題には上がらなくなってしまいましたが、
この一連の事件はスノーデンという人物の「物語」ではなく、我々が受け取るべき「現実」の出来事なのだと実感させられます。
ジャーナリズムと圧力
先ほども言ったように、ドキュメンタリー映画らしく、基本的には静かに話は進んでいくのですが、
スノーデン氏が自らの存在を公表した後の展開は非常に緊張感があります。
自らを試みず内部告発に踏み込むスノーデン氏と、取材と記事の執筆を担当したグレン・グリーンウォルド氏に
アメリカ政府の捜査と圧力がジワジワと迫っていく様からは、巨大国家の恐ろしさを十分に理解できるでしょう。
なぜこちらを先に見るのか?
もちろん、これらの描写は「スノーデン」でも十分観ることが出来ると思います。
逆に「シチズン・フォー」に、映画としてのドラマチックな展開を期待していると拍子抜けしてしまうかもしれません。
では、なぜこちらを先に見るべきなのか?
それはスノーデン氏自身が語っていることにも通ずるものがあります。
当事者の人格に踏み込むということ
「シチズン・フォー」の中で
グリーンウォルド氏が取材の一番最初にスノーデン氏の素性を聞いた時に、
彼がその答えをためらうシーンがあります。
マスコミは、何か事件があると、
その当事者の人格に踏み込みたがります。
どういう性格で、どのような人生を送ってきた誰がその事件に関わっているかに注目するのです。
時には被害者の人格にすら踏み込んでいくこともあります。
しかし、そうやって人格に踏み込んでいくと、
事件の本質から論点がどんどんズレていく。
スノーデン氏はそれを望んでいなかった。
内部告発したスノーデンという男が何者なのかではなく、
アメリカ国民と世界中の人々が政府から監視されているんだという事実を、まず受け止めてもらいたかったんだと思います。
映画『スノーデン』を見る前に
『スノーデン』は予告を見る限り、スリリングで面白い作品になりそうですよね。
そんなスノーデン氏の姿を見たら、もしかしたら彼が英雄(ヒーロー)のように感じてしまうかもしれません。
しかし、一度スノーデンという男を知って、彼に感情移入してしまったら、
せっかく彼が命がけで提起した問題を純粋に捉えられなくなってしまう。
この事件は
アメリカが悪い、スノーデンすごい
なんて簡単な話じゃないんです。
私たちが守るべき「プライバシー」というものは何か、もう一度考える機会です。
もしエドワード・スノーデンによる内部告発に興味をもったなら、
『スノーデン』を見る前に、自分の頭で、そしてフラットな目線で一度考えてみてほしいと思います。
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